救急救命士の仰天現場 パラメディック119~すべては救命のために~

パラメディック119-すべては救命のために-
緊迫の救急現場 case15

パラメディック119緊迫の救急現場緊迫の転院搬送 up data 2008.8.31

緊迫の転院搬送

 救急隊の活動業務の中に転院搬送と呼ばれるものがあります。これは医療機関から医療機関への搬送業務です。本来、救急隊は急病や怪我など、傷病者が発生した現場に駆けつけ医療機関に搬送し、傷病者を医師の管理下に送り届けることが業務です。既に医師の管理下にある患者さんを救急車と言う医師の管理下外に出し、再び医師の管理下に送り届ける、救急隊の活動としては例外的業務となります。医師が患者さんを診察した結果、その病院では対応できない場合など、医師が緊急に他医療機関での処置が必要であると判断した場合に依頼されるもの、それが転院搬送です。

 患者さんにとっては病院という設備、スタッフの整った場所から病院内に比べればはるかに設備もスタッフも限られてしまう救急車に乗って搬送されるというリスクを負うこととなります。一度、患者さんを診て判断した医師にも患者さんの安全を守る責任がありますから、原則、転院搬送は医師が同乗して行うものです。その病院で対応できず、緊急に専門処置をしなければならない危険な状態の患者さんを搬送するのです。医師が同乗し、管理しつつ搬送すべきなのは当然こ事といえるでしょう。とは言え、多忙な医師がいくら緊急性が高いとはいえ、他の患者さんがいるのに救急車に同乗すると言うのはたいへん難しいようで、代わりに医師から指示を受けた看護師が同乗する場合、私たち救急隊に搬送途上行うべき処置などを申し送って、同乗なしで搬送する場合もけっこうあります。

 原則、医師が同乗、原則、緊急に処置が必要だから…。原則と言うのはあくまで原則と言うのはよくあるお話で。。この原則から逸脱しているであろう転院搬送業務もかなりあるものです。そんなお話はまたの機会にして、今回のお話は、これぞ転院搬送、まさに救急車が必要な緊迫の現場、転院搬送の現場のお話です。

 「救急出場、○町○番地、A病院から転院搬送、搬送先は現在、医師により選定中、なお、医師の同乗があります」との指令に私たち救急隊は出場しました。医師が同乗することが決まっている転院搬送要請です。私たち救急隊としては、到着と同時に既に医療処置が行われ、診断結果が下っている患者さんを扱う訳です。さらに搬送途上、傷病者は医師の管理下にあります。判断に迷ったり、搬送先医療機関に苦慮するなどの心配がありません、こんなに心強い現場はありません。…がそんな私たちの密かな安心は見事に裏切られました。

 現場到着
A病院救急入り口に停車、A病院は救急病院で私たちもよく搬送する病院です。私たちが搬送する際には、昼間は外来に当たっている医師が救急処置室にやってきて診察する、夜は当直の医師が診察すると言う一般的な救急病院です。警備員さんの案内に従いメインストレッチャーを引いて救急処置室に入りました。救急処置室にはいつもではあり得ない3名ほどの医師と看護師が慌しくしており、只ならぬ緊迫の雰囲気が漂っていました。処置台には40代の男性が仰臥位でおり、医師、看護師が処置をしていました。椅子に座っている医師はどこか転院先医療機関に受入れの連絡をしていました。
救急隊長「救急隊です、到着しました」
医師「この方が患者さんです、今、ここでできる処置をしていますからもう少し待ってください!搬送先はまだ連絡中です、今、○病院に連絡していますから」
救急隊長「分かりました、先生、患者さんの情報と概要等教えていただけますか」
医師「急げ!」
救急隊長「…」
処置に当たっている医師が看護師や他の医師に激しく指示を飛ばしている。
他の医師「隊長さん、○病院の救命救急センターに連絡が取れた!受け入れてもらえることになったから、事故の概要や状態などは搬送途上に話します、私が同乗します、急いで!」
救急隊長「了解しました」
A病院の医師、看護師、そして私たち救急隊の手で傷病者は処置台からメインストレッチャーへ、すぐに出発することとなりました。搬送途上、救急隊が傷病者に継続すべき処置は酸素投与を最大で、さらに心電図は除細動パッドでモニターとの指示でした。…除細動を行うかもしれないほど危険な状態な傷病者と言うことです。

 現場出発
A病院の医師、傷病者の同僚の男性が同乗し救急隊は○病院救命救急センターへと向かいます。搬送途上、医師からの概要、現在の傷病者の状態などが申し送られました。
傷病者は40代男性のFさん、工事現場で作業中、上階から落ちてきた柱が頭部を直撃したとのことでした。同僚の話によるとこの柱の重さは100キロ以上、Fさんのかぶっていたヘルメットは陥没し、Fさんはその場に倒れ、うめき声をあげ続けたのだそうです。すぐに救急車!とならず…、Fさんは呼びかけに分かっているような反応を示していたため、同僚の方たち数名が担いで現場から目と鼻の先であったA病院に運び込んだとのことでした。Fさんには外観からはそれと分かる外傷は分かりませんでしたが、事故概要からしてみてもただではすみません。診察に当たった医師は外来で診察に当たっていた他の医師の応援を呼んで救急処置室は戦場と化したのです。緊急にオペが必要な患者であり、A病院ではその対応ができないと言う事ですぐに救急要請、医師たちの処置と並行して受け入れ先の医療機関選定となったとのことでした。
同乗した医師「詳しい傷病名は確定できないけど、少なくとも頭蓋骨陥没骨折、脳挫傷、しかもかなり出血している状態です」
救急隊長「先生、この出血は…」
同乗した医師「ええ、髄液耳漏です…」

 ○病院救命救急センター到着
 Fさんは救命救急センターの処置台に移され、すぐに挿管などの処置が行われました。すぐに緊急オペに当たるとのことでした。「脳挫傷 重篤」

 帰署途上
救急機関員「髄液耳漏、高、高エネルギー外傷じゃない」
救急隊長「本当、よく担いで病院って思ったよな」
救急隊員「今のFさんなんてまさに救急車の大適応ですけどね」
救急機関員「工事現場の職人さんだろ?救急車なんてそうそう呼ばないよな」
救急隊員「まさにロードアンドゴーでしたね」
救急隊長「上り搬送(2次から3次へ)、これが本来の転院搬送だよな」
救急機関員「本当、不適切な下り転送(3次から2次へ)も少し考えてもらわないと」

 救急隊員たちも納得の救急利用、納得の転院搬送事案でした。さて、では不適切だと思われる転院搬送事案とはいったいどういったものなのでしょうか?それは救急救命士のため息現場に譲ることにします。がっくりしてしまう転院搬送事案のお話は作成中です。

 この記事へのご意見・ご感想、追加、修正などなどをお寄せください。救急救命士、救急隊のみなさんはこんな忘れられない辛い現場に当たった時、どうしていますか?パラメディック119ブログ版・救急救命士の待機室にコメントを残すことができます。

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