救急救命士の仰天現場 パラメディック119〜すべては救命のために〜
パラメディック119仰天現場300万円くらいあるんですけど… Last up 2006.4.5

救急救命士の仰天現場 case5

300万円くらいあるんですけど…

 救急隊が扱うのは傷病者の方の命、生命、財産です。もちろん私たち救急隊は人命を一番に考え、傷病者の方の最善の利益を考えて行動します。またそれに匹敵するほど大切な仕事が財産を守ることです。消防隊も人命救助が最優先、人命危険がなかったら次に最優先するのが延焼防止、住民の財産を守ることも私たち消防官の大切な大切な使命です。救急現場においては緊急事態に慌てふためく傷病者やその家族がいます。そんな時に迅速な急がなくちゃいけない活動の中であっても、「奥さん、急がなくちゃいけないけど火の元と戸締りをしっかり確認しましょう」その一声が大切になります。傷病者が元気になって帰ってきたとき空き巣に入られて財産を失っていたら、火事になって家がなかったらたいへんです。私たち救急隊の活動は傷病者の安全の管理と同時に持ち物、財産の管理も大切になります。今回のお話は傷病者安全管理よりも持ち物管理にドキドキしてしまった事案です。

 「救急出場、高齢男性は足部の痛み動けないもの」との指令に私たち救急隊は出場しました。

 現場到着。傷病者は80代の男性Hさん。足部の痛みを訴えているも救急車が家の前に停車すると自分で歩いて玄関まで出てきました。Hさんの家はそうとう年季の入った感じで、都心部には珍しい木造2階の一戸建てで周りがビルや耐火造の建物ばかりの中でちょっと浮いた感じのおうちでした。お世辞にもキレイとはいえない状態で、隙間風が入ってきそうな状態のおうちでした。私が泥棒でも「このうちじゃ捕るものなんてなさそうだ」って思いそうな家です。
傷病者H「足が痛いんだ…。今朝がたから痛かったんだけどもう痛くて痛くて動けないんだ」
119番したのはHさん本人で奥さんも入院中、今はひとりで暮らしているとのことでした。
救急隊「Hさん、それではご自分で救急車には乗れますね?その前に戸締りと火の元は確認しましたか?」
傷病者H「ああ…誰もうちになんて入らないから鍵なんてしなくて大丈夫だ」
救急隊「そんなこと言わないで、ちゃんと戸締りしてから出かけましょう。帰ってきたとき大切なものがなくなっていたらたいへんですよ」
傷病者H「…分かったよ」
Hさんはしぶしぶ家に鍵をかけて救急車に乗り込みました。

 車内収容。Hさんは両足の痛みを訴えているも別に浮腫や変形があるわけでもありませんでした。自力歩行で救急車に乗り込める状態、救急隊は整形外科で診察可能な病院を選定し始めました。失礼ですがこのHさん、高齢もあり少し痴呆があるのかな?という感じの方でした。
救急隊長「Hさん、整形外科でかかったことのある病院ってありますか?」
傷病者H「整形外科…近くのK病院にかかったことがあるかもしれない」
救急隊長「診察券をお持ちなら見せてくれますか」
傷病者H「その袋に入っているから開けて出してくれ」
救急隊員「分かりました、この袋ですね、Hさん、私が開けますよ」
傷病者の所持品を見せてもらう場合、本人が見ている目の前で本人の同意の上で行います。お世辞にもキレイとはいえない薄汚れたカバンを開けると財布が入っていました。
救急隊員「Hさんこのお財布ですね、診察券見せてくださいね」
その財布を開くと周辺の病院の診察券の束です。さらに現金が20万円くらい。(うわぁこのおじいちゃんこんなカッコしているのにけっこう持っているもんだなぁ)
救急隊員「Hさん診察券たくさんお持ちなんですね、でもK病院の診察券はこの財布にはないみたいですよ」
傷病者H「じゃあそのきんちゃくに入っているはずだ」
救急隊員「きんちゃく…?ああこの袋ですね」
カバンよりもさらに薄汚れたきんちゃく袋に入っているといいます。
救急隊員「それではこのきんちゃくを開けますよ(…!!うわぁ!わわわわわ…)あ・ありました!Hさん!HさんではこのK病院の診察券だけちょっとお借りしますからね、K病院の診察券だけ借りましたからね」
必要以上に2度3度と確認しました。というのもその薄汚れたきんちゃく袋の中にははちきれんばかりに現金が詰め込んでありました。おそらく300万円くらいの諭吉たちです。診察券を隊長に渡して耳元で、
救急隊員「隊長、あの袋、300万円くらい入ってますから」
救急隊長「!?…了解。」

 別にカバンに300万円が入っていようと、何が入っていようと傷病者の大切な所持品、いつも通りに気を使って管理すればいいんですけどなかなかそうはいなかい。なくなったらたいへんですし、このHさんちょっとだけ痴呆が入っているような感じ、あとで「ひと束なくなった!」なんて言われたらたいへんです。こういう場合、救急隊3人でカバンには多額の現金があるということを認識してしっかりと本人に管理してもらう。私たちはK病院の診察券だけを借りてあとはカバンをずっとHさんの胸の上において医師に引きつぐまでずっと肌身離さず持っていてもらいました。Hさんは軽症でした。

 帰署途上。
救急隊員「いやぁビックリしましたよ!あの薄汚れたおじいちゃんがあんなに持っているんですもん」
救急隊長「あの家だもんな、そんなにあるとは思えないよな」
救急隊員「おじいちゃんちょっと痴呆っぽいし、なくなったなんて言われかねないから本当気を使っちゃいましたよ」
救急機関員「別になくなったって言われたって大丈夫だよ、カバンを開けたのお前だけだから、隊長もオレも触ってもないから、オレなんてずっと運転席にいたし」
救急隊員「ちっとも大丈夫じゃないじゃないですか!」

 救急隊にはこんなこともたまにあるんです。救急隊はだいたいその家の玄関で生活レベル、きちんとした生活をしているかしていないかがよく分かります。今回のHさんのおうちはまぁお世辞にもちゃんとした生活をしているような雰囲気はありませんでした。まさか多額の現金を持っているなんて夢にも思いませんでした。それにしても鍵もかけないで出かけようとしていたHさん、いったい何をやっていた人なんでしょうか…?

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