救急名詞の仰天現場 case6
またまたぁ〜
私たち救急隊は普段の生活を営んでいる限りではなかなか踏み入れない世界を覗き見る機会が多々あるものです。今回のこのお話も救急隊をしていなければまず踏み込むことのないであろうお仕事先の現場に出動していった際のお話です。
まだ日も高い午後、とてもいい天気で暖かい日でした。「救急出場○○マンション○号室、19歳の女性は腹痛」との指令に私たち救急隊は出場しました。
現着。マンション玄関前に停車、現場である○号室に向かいました。ガチャリ、部屋のドアが開いた。
救急隊「こんにちは、救急隊です。腹痛を訴えている女性の方はどちらですか?」
若い男性「は、はい。こっちです、急にお腹が痛いというので…、顔色もちょっと悪いようで…。」
この27,8くらいであろう若い男性が通報者で傷病者のいる部屋まで案内してくれました。マンションはまあ普通のマンションで間取りは2LDKか2DKか?家族3,4人が暮らすであろうマンションです。ただなんでしょうかこの違和感は…?部屋の廊下には何やらダンボールがたくさん積まれていて廊下の半分を占領しています。廊下を進み奥の部屋に傷病者の19歳女性はいました。
傷病者接触。傷病者の19歳女性はかなり派手目の化粧と日焼けした肌、けっこうきつめの香水の匂いがしました。いかにもギャルって感じです。部屋のソファに寝込んでおり腹部の痛みを訴えていました。脱力感があるようでぐったりと具合が悪そうではありますが、この日焼けと化粧で顔色の判断は困難です。私たちを案内してくれた男性とはまた別の若い男性が付き添っていました。部屋はお世辞にも掃除が行き届いているとは言えない状態でとてもホコリっぽい、若い女の子が生活している部屋とはとても思えない。なんとも殺風景であるものと言えば部屋の隅に積まれたダンボール、それから電話とFAX、テレビくらいなものです。何かの会社とも思えないしオフィスって感じでもない、倉庫という感じでもない。おや?あれは…?電話の前には小さなホワイトボード、’かすみ’やら’さゆり’だの女の子の名前が書いてありスケジュール表になっていました。ひょっとしてここは…。
搬送開始、部屋で傷病者に付き添っていた若い男性が付き添うこととなりました。この男性、それから案内してくれた男性もとにかくこの傷病者の女性に優しい。まるで割れ物を扱うように大切な大切な扱いようでした。
若い男性「大丈夫、今日は無理しなくていいんだからね。何も心配しなくていいからね。」
傷病者女性「うん…。」
私たちは内科を選定、若い女性の腹痛ということもあり、婦人科もある病院へ搬送しました。搬送途上の救急車内。
救急隊長「同乗していただいた方は患者さんとはどのようなご関係になりますか?」
若い男性「え!…関係ですか。…関係。…。」
口ごもる男性に隊長が助け舟を出す。
救急隊長「上司かな?ね、お仕事の上司に当たるんでしょ」
若い男性「上司?…そ、そうですね、上司です。」
そんなにどきまきするなって、もうだいたい分かったから。結局女性は「急性腹症 軽症」万が一を考えて婦人科のある病院を選定しましたが婦人系の病気はありませんでした。
帰署途上。
救急機関員「ちらかった部屋だったよなぁ」
救急隊員「あの部屋のホワイトボードみました?何人かの女の子のスケジュール表、なんかの風俗やってるんですよねあそこで」
救急機関員「きっとあれだろ、デリヘルだよ、あそこからあの女の子を乗せて行くんだろ。あの男のどっちかは運転手なんじゃないの」
救急隊員「ああそうですか、言われてみればそんな感じですね。デリヘルってデリバリーヘルスですよね?あそこから女の子を送迎するんですね、なるほどね〜」
救急隊長・機関員「またまたぁ〜よ〜く知っているくせに!」
救急隊員「知りませんって!何言っているんですか!」
救急隊員をやっているとこんなところにも足を踏み入れるのです。まさに私が知りえない世界でした。あのマンションには何も知らず普通の生活をしている家族たちがたくさん住んでいるのでしょう。都会では普通のことなのでしょうが。
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