救急救命士の仰天現場 パラメディック119~すべては救命のために~

パラメディック119-すべては救命のために-
救急救命士の仰天現場報告 case15

パラメディック119救急救命士の仰天現場報告この冷ややかな感じは…? up data 2008.9.3

この冷ややかな感じは…?

 私たち救急隊の仕事は緊急事態の人が助けを待つところに駆けつけることです。緊急事態だと判断するのは通報される人ですので、本当に緊急事態の時もあれば、緊急性ゼロだったなんてこともよくある事です。一般の方にとっては生涯に1度呼ぶか呼ばないかの救急車、その適応か否かの判断が難しいのは仕方がありません。ただ、要請した通報者、またその周りの人たちには救急車が必要な緊急事態なのです。私たちが駆けつけた時、そこには心配そうに待っている人たちがいるのが普通です。今回は明らかに怪我をしている人が倒れているにも関わらず、まったくそんな雰囲気がない、違和感を感じずにはいられない現場のお話です。

 「救急隊、消防隊出場、○町○丁目○駅構内、3・4番線ホーム階段下に怪我人、男性は階段を転落したとのこと。通報は駅員のEさん」との指令に私たち救急隊、さらに同じ消防署の消防隊が出場しました。出場先の○駅は歓楽街を抱える街の巨大ステーションです。駅にはたくさんの人がいますので、救急隊の活動支援、さらに安全管理等、マンパワーが必要であろうとのことでの消防隊の同時出場です。○駅へ向けて救急車、消防車、2台の緊急車両が走行します。街は小雨が降っていました。

 現場到着
○駅南口ロータリーに停車、南口入り口には駅員の案内がありました。
救急隊長「救急隊です、通報いただいたEさん?」
駅員E「ええ、どうもお願いします」
救急隊長「どうされましたか?」
駅員E「40代の男性なんですけどね…ちょっといいですか」
救急隊長「??」
何か手招きをする駅員さん、隊長に何やらヒソヒソと話しています。
救急隊長「あの階段下に40代の男性が倒れているから観察、処置を実施してて、オレは駅員さんから情報を取るから」
救急隊員「はい、了解しました」
いつもならまず傷病者の状態をみて、それから自ら処置に当たるべきか、それは隊員にやらせて自分は違うことをするか判断する隊長がまだ傷病者と接触する前の段階で自分は先に情報を取ると宣言しました。どういうことでしょうか?

 傷病者接触
傷病者は40代男性のWさん。3・4番ホームに上がる階段の下で仰臥位になって倒れていました。駅構内ということもありたくさん人が取り囲んでいました。こんな状況でもだいたい1、2名が傷病者のそばに寄り添っているものですが、この現場では倒れている傷病者から2mくらい離れた場所でヤジ馬たちが取り囲んでいました。なんでしょうか?この違和感は??
消防隊長「すみません。ちょっとあけてもらって良いですか~」
救急隊員「救急隊です、大丈夫ですか?どうされましたか?」
傷病者W「…」
救急隊員「分かりますか?お返事できますか?」
傷病者W「ええ…」
Wさんはしっかりと返事ができる状態、意識は清明です。後頭部を床にぶつけていた様で後頭部に大きな血腫(たんこぶ)ができていました。
救急機関員「こちらの方が落ちたところを見た方いますか?何段くらいから落ちたか分かりませんか?」
目撃者男性「あの辺からですよ、あの辺から滑ってそのままこの状態になって落ちました」
救急機関員「あそこから…けっこうあるね、高さにしたら2mってところだな」
救急隊員「頸部固定して、一応全身固定もした方が良いですね」
救急機関員「そうだな、そうしよう」
Wさんを全身固定資器材に固定する私たち。そんな処置をしている間も向けられている周りの視線が何か違う。なんでしょうか?この冷ややかな感じは…?そうこうしている間に救急隊長が駅員さんの現場に来ました。あれ?警察官もいる。
救急隊員「隊長、後頭部に大きな血腫があります。今、全身固定をやっています」
救急隊長「了解、全身固定ができたら搬送しよう」
救急隊員「はい、了解です」
救急隊長「それでは、病院はこれから選定しますから、搬送後は先ほどの通りに」
警察官「ええ、お願いします」
何やら隊長と警察官の方とで何か話が付いていました。

 車内収容
救急隊長「病院連絡はオレがやるから傷病者の継続観察を2人であたってくれ」
救急隊員・機関員「了解しました」
なんでしょうか?この現場、隊員と機関員のよく分からないところで進んでいる。ただ、このWさん、周りの人から冷ややかな視線を浴びて、警察官にお世話にならなくてはならないことをしたってことでしょう。ということは…
救急機関員「Wさん、痛いのは頭だけ?ずいぶん高いところから落ちたみたいだけどこの雨だし足を滑らせました?」
Wさん「…」
明らかに意識は清明のWさんも何も話したがりません。救急車の外で搬送連絡をしている隊長、傷病者に聞かれたくない連絡内容が付加されていると言うことです。病院はすぐに決まりました。

 病院到着
私たちがWさんを救急処置室に移しストレッチャーを救急車に片付けている時にパトカーが来ました。
警察官「どうも、○駅の事案ですよね?」
救急隊員「そうです」
警察官「患者さんはどこですか?」
救急隊員「今は、3番処置室だと思います、まだ診察中ですよ、うちの隊長が中にいますから」
警察官「どうも」
救急機関員「あの人何やらかしたんだ?やっぱりあれか?」
救急隊員「それしかないですよ、痴漢でしょ、チカン」
Wさんは「頭部打撲 軽症」でした。

 帰署途上
救急隊長「下り電車の中で女性に腕を捕まれて痴漢ですって叫ばれたんだってさ、周りにいた男性たちがとりあえず次の駅で降りようって降ろしたた瞬間、全速力で走って逃げたんだって」
救急機関員「なるほどね~」
救急隊長「それであの雨だろ、滑って落っこちて、そのままあの形になってピクリとも動かないから救急要請だってさ」
救急隊員「あの高さから全速力でそのまま落ちたんだからもう逃げられないですよね」
救急機関員「じゃあ、あの周りにいた人たちは?」
救急隊長「電車からホームに降ろして、それから追いかけた人が何人かいたみたいだよ」
救急隊員「なるほど、それで目撃者もいたし、みんな冷ややかな目で見ているはずですね」
救急機関員「それにしても痴漢して逃げたは良いけど怪我して、さらし者になって、これから警察署だろ、バカだよなぁ」
救急隊員「痴漢とか性癖は病気ですからね、困ったもんですね」
救急隊長「警察官の話だとあのWさん、家族も子どももいるみたいだぞ」
救急機関員「あ~あ、それじゃあ家族もショックを受けるなぁ、お前も気をつけろよ」
救急隊員「オレにはそんな性癖ありませんよ、心配ご無用ですって」
救急隊長「こっちにはそんな気はなくても間違えられてもアウトだからな」
救急機関員「そうですね、本当気をつけないと」

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