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| パラメディック119>ためいき現場>タクシーがつかまらなかったから | Last up 2005.9.9 |
救急救命士のため息現場 case15タクシーがつかまらなかったから今日は9月9日、救急の日です。この日をいい機会に救急車の利用の仕方をみなさんが考えてくれればいいのですが。この救急の日に日本ではじめて画期的?になるかどうかの取り組みが始まりました。このホームページでも散々触れている都心部における救急出場件数の増大により、救急車が緊急の方の下に迅速に到着できないという問題、この問題を少しでも改善するための対策として今日から「サポートCab(キャブ)」と呼ばれる新サービスが東京都でスタートしました。 簡単に言うとこの新サービス、救急救命講習を受けた運転手がハンドルを握るタクシーを紹介するというものです。安易に119番を利用する軽症の方にタクシーを紹介して、飽和状態の救急出場件数を少しでも減らそうというものです。「到着時間が1分早くなるだけで命を救える患者もいる」この新サービスには、救急隊員らの切実な思いが込められている。逆に言えば「傷病者の下へ年々迅速に到着できなくなっている救急車、たくさんの方が迅速な救命処置、搬送を受けられず死んでいる」間違いありません。現場にいれば嫌というほどそれが分かる。このサービスの詳しいことは新聞やニュースサイトで調べてみてください。 そんな新サービスが始まったんだというのをちょっと心に留めていただいて、ため息現場のお話を。 「救急出場、男性は指を受傷したもの」との指令に私たち救急隊は出場しました。夜の8時頃、小雨が舞う中の出場でした。出場途上、PHSを活用し通報電話番号に連絡、受傷した60代の男性が出ました。 現着。60代男性Hさんは自宅兼工場のお宅で仕事中に機械を操作中、左中指をざっくりと切っちゃったそうなんです。そこで自分ですぐ近所のいつもお世話になっているお医者さんのところに行ったのだそうです。先生は滅菌ガーゼや包帯で止血処置をして、 搬送した病院での検査の結果、この男性の左中指は骨折しており、傷口も数針縫う必要のある怪我でした。が、もちろん歩行は可能、傷病名は「左中指骨折、切創 軽症」さて、この方、救急車が必要な方だったのでしょうか?お医者さんに診察してもらい、緊急性のある方をお医者さんがタクシーで病院に行きなさいって言うでしょうか?タクシーで処置を受けに行けば大丈夫な患者だからお医者さんはそう指示したのです。タクシーがつかまわなかったから救急車をタクシーにしたんですね。 ここをご覧の方はこの方をどう思いますか?救急車の使い方を分かっていない、ひどい使い方だと思うでしょうか?救急隊から言わせてもらえば、確かに救急車の適正利用からは程遠い利用の仕方です。正直、この時は「冗談じゃないよ本当…」って思っていました。この時、「すぐ近所で心肺停止の方がいたのならどうするんだ?」そう思います。しかしね、この方は別に常習者って訳でもなく、たちの悪い方でもありませんでした。そもそもタクシーさえつかまれば病院には自分で行ったし、そのためのお金も診察のためのお金も持ち合わせていました。 さて、今日からはじまったサポートキャブに話を戻しましょう。119番通報を受けて、この方のこれまでの経過を知り得たならこのサービスを適用すればいい。この方にはタクシーで行く意志があるし、そのお金の用意もあるのです。この方に、今の救急車の出場状況とこの新しいサービスの意味を説明すれば「ではタクシーで行きましょう、もともとタクシーで行くつもりでしたから、ではタクシーを紹介してください」ってなると思います。しかし、これってマレなケースで、こういう方は年間に何度も119番通報なんてしないのです。実際このHさんははじめて救急車を呼んだと言っていました。態度や言動からしても本当だと思います。60年以上生きてきてはじめて救急車を呼んだ方なのです。まあそれでもこの増え続ける救急要請の1件でも減らすことができたのなら、本当に救急車が必要な方の下に少しでも早く到着できることにつながるかもしれない。いつも救急車がからっぽの消防署をいくつも通り過ぎて、10分以上かけて現場に向かいます。その現場が症状の重い方だった時、本当に申し訳ない気持ちになります。「一刻も早くと私たちを待っていただろうに…」、その方が亡くなった時、罪悪感を無力感を感じます。「ひょっとして5分早く到着できたら助けられたんじゃないのか?直近の救急隊が待機していたのなら?」「なんのために消防官になった?なんのために救急隊員になった?消防って組織は誰のためにあるんだ?」いつもいつもいつもそんな思いをしている現場の救急隊員として、この新しいサービスが上手く機能し、救急出場件数増加に歯止めをかける画期的サービスに発展してほしいと心から願います。 ただ、根本的問題解決につながるのは難しいと思います。「タクシー?タクシー使えば金がかかるだろ?救急車はタダだから呼んでるんだよ!」「自分で行けば交通費もかかるしすごく待たされるから救急車で病院に行こう」「金がない。家もない。腹も減った。だから救急車を呼ぼう」60年以上生きてきてはじめて救急車を使う人は全然問題じゃないんですよ。モラルのある人は救急車なんてめったなことじゃ使いませんから。一番問題なのはほんの一部のモラルのない人たちなんです。根本を解決できなければこれからも益々、死ななくて済んだかもしれない方が死んでいくケースが増えていくことでしょう。私たち救急隊がいつも救命のために汗を流せる日が来てほしいものです。
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