救急救命士のため息 パラメディック119〜すべては救命のために〜
パラメディック119ためいき現場そりゃないよ先生 Last up 2005.11.14

救急救命士のため息現場 case17

そりゃないよ先生

 救急隊の仕事は現場で傷病者に接触し医師に引き継ぐまでが最も重要な活動です。傷病者の生命、安全が私たち救急隊にはかかっているのです。逆に言えば、私たちは医師に引き継げば一安心です。私たちの隊には救急救命士がいると言ったって医師に比べればできることなんて数えるくらいなもの。私たちの仕事は救命のために最善を尽くすことですが、その大部分、ほとんどがより早く救命のプロ、お医者さんのところに傷病者をお連れすることなんです。傷病者にとっても、そして私たち救急隊にとってもやっぱりお医者さんは頼りになる存在です。傷病者も私たちもお医者さんの元について「ああこれで大丈夫だ」とホッとするのです。

 このように頼りになるお医者さん、だからこそ先生と尊敬されて呼ばれているのでしょう。私たち救急隊もまさに苦しんでいる人たちに手を差し伸べる素晴らしい先生にたくさん出会います。「私や私の家族が怪我や病気になったのならこの先生に診てもらいたい」この仕事をしているとそんな先生とたくさん出会うことができます。その一方、とんでもない医師に出会うこともたまにあるのです。世の中信頼のおける職業に就いている人の中にもその信頼を損ねる人たちというのは必ずいるものです。汚職に走る政治家、痴漢する警察官、性犯罪者の教師、放火で捕まった消防官…、私たち救急隊員の中にだって「この人なんで救急隊やっているんだ?」疑問に感じてしまうような人だっています。お医者さんの中にだって犯罪までいかなくても人間として疑ってしまう人だっているのはあるいは必然なのかもしれません。今回は搬送病院で出会ったとんでもない医師に関するお話です。

 「救急出場、B病院に怪我人、8歳の子どもは指を切創」
救急隊員「…またあの病院だよ」
通信室勤務員「病院で怪我人?そこで治療すればいいじゃないですかね?」
救急隊員「この辺じゃ有名なんですよ、この病院は診たくないと患者を門前払いにするんです。」
通信室勤務員「そんな病院あるの!?」
救急隊員「あるんですよ…とんでもない話ですけどね。」
通信室勤務員から出場指令書を受け取って出動しました。

 現着。季節は秋、まだ冬の気配はなかったものの夜の11時にもなるとけっこう冷える。そんな中、病院の前で30歳代であろう若い父親とパジャマ姿の娘が立っていました。救急車が停車すると父親が怒りの形相で救急車に向かって歩いてきた。
救急隊員「そちらのお子さんがお怪我された方ですね?」
父親「そうです。お願いします。」
パジャマ姿の小学校低学年の女の子、宿題の工作を作っていたところ左指を切ってしまったとのことでした。
救急隊員「そのカッコじゃ寒いですし怪我したところもよく見えませんから救急車に乗りましょう、自分で乗れますね?」
父親「はい、怪我しているのは指だけですから。この病院、診れないって言って中にも入れないんですよ、すごい頭きちゃってさ」
救急隊員「(この病院ではいつものことなんですよ、救急隊員はそんなことは言えない)…そうですか、それは災難でしたね」

 傷病者とその父親を車内収容した。傷病者の女の子はハンカチで指を押さえて自力歩行で救急車に乗り込んできた。
救急隊員「ごめんね、ちょっと痛いところ見せてね」
女の子「痛い痛い!」
ハンカチを取ると1センチほどの切り傷、出血は完全に止まっており滅菌ガーゼを当てるだけの処置をしました。
救急隊(お父さん、心配しなくてもこれならつばつけておけば大丈夫だよ)
父親「たいした怪我じゃないんで大丈夫だと思ったんですけど一応、医者に診てもらおうと思って連れてきたら「小児科がないから無理だ」って言われて中に入れてももらえなかったんですよ。そんなのおかしいって言ったらなんか救急車呼ばれちゃって、…なんかすみませんね、こんな怪我なのに。本当この病院頭くるよ!」
お父さんは病院に対してたいへん腹を立てているですが、私たち救急隊には非常に低姿勢に接してきました。小児科がないからと病院は玄関を開けることもせずもちろん医師は出てくることもなく、看護師が救急車を呼んだのです。さらにこの病院、2次指定病院、救急病院だから驚きです。

 私たちは近所の救急病院に搬送し活動は終了、女の子はもちろん「指切創」の軽症でした。帰署途上の救急車内。
救急隊員「それにしてもまたやられちゃいましたね、本当すごい病院ですよね」
救急隊長「今日なんてまだいい方だよ、軽症だったじゃんか、オレなんて前の所属にいた時にやっぱりあの病院からの要請で行ったんだけどさ、呼吸困難で病院の玄関で座り込んじゃってる患者を今日みたいに科目外だからって門前払いにしたからね。雪まで降っている日にだよ。当時の隊長がさすがに怒ってさ、「科目だとうかどうこうじゃなくて、あなたたち人間としてどうかしているんじゃないのか!」なんて言っていたからね」
救急機関員「この辺じゃ有名じゃんかあの病院、あれで救急病院だってんだから恐ろしい話だよな」

 この病院の門前払いはかなり有名で近隣救急隊はかなり悩まされています。この日のお父さんは怒ってはいたもののそれは病院にで私たち救急隊にとばっちりはありませんでしたが、中には救急隊にまでその怒りをぶつけてくる家族もいるんです。(オレたちが悪いんじゃないよ〜)と思いながらも罵声を浴びながらの活動、本当たまりません。私の救急隊のよく搬送する周辺病院にはこのB病院、さらにこのB病院ほどではありませんがやっぱり医師が診察することなく「科目外だから」と救急車を呼ぶ病院があります。本当恐ろしい話です。

 では、まっとうな病院は科目外の患者がやってきた時どうするのでしょうか?それはまたそりゃないよ先生2にて。

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