救急救命士の仰天現場 パラメディック119~すべては救命のために~

パラメディック119-すべては救命のために-
救急救命士のため息現場報告 case36

パラメディック119ため息現場アイツ絶対給食費なんて払ってないぜ up data 2007.12.11

アイツ絶対給食費なんて払ってないぜ

 最近よく聞く言葉にモンスターペアレントなんて言葉があります。なんでも学校などに無茶苦茶な注文をつける親御さんのことだそうで、自分の子どもが何より一番、他のことは関係ない!そんな人であろう方たちは救急隊員ならいくらでも扱うことがあって…。今回扱った方がそういう方なのかどうかは定かではありませんが、隊長と機関員の中ではある結論が出ていたみたいです。と言う隊員の私も同じように思いましたが。

 「救急出場、○丁…、40代の男性は腰部痛で歩行困難、本人からの通報」との指令に私たち救急隊は出場しました。

 腰部痛での救急要請と言うのはよくある事案です。腰部痛にも内科系疾患などがあり生命に危険を及ぼすような危険な兆候であることもありますが、整形外科系のものがほとんどです。そうである場合、生命に危険を及ぼす緊急度があるものではなく、ただ単純に動けない、病院にいけないから救急要請となっているケースがほとんどです。救急隊としてはただの運び屋業務をこなすこととなり、タクシーや民間救急車で行けるのならそうしてほしいのが本音です。しかし、ちょっと触ると激痛を訴える方など腰部痛が本当にひどい方は救急隊、さらに消防隊などマンパワーを活用しないととても搬送できないケースもあります。緊急度は低いケースがほとんどですが、激痛を訴える腰部痛の傷病者からの要請は仕方がありません。こういったケースの場合は、急いで運ぶなんてことはしないでなるべく動揺を与えず、傷病者が痛くないようにそ~っとそ~っと搬送することを心がけます。何でもかんでも急げば良いのが救急活動ではないということです。

 現場到着。
傷病者は40代の男性でKさん、髪型は金髪で40代にしてはずいぶんと派手な格好の方でした。自宅であるマンションの入り口に両膝を両手を地面のアスファルトに付いた状態、四つん這いの状態でいました。
救急隊長「救急隊です、救急車を要請されたのはあなたですか?」
Kさん「ええ、オレです」
救急隊長「腰部痛?痛いのは腰ですね?」
Kさん「そうそう、もともと腰痛持ちなんだけどもう動けなくって」
傷病者はこのように意識ははっきりしている方です。傷病者の観察は隊長に任せて隊員と機関員はメインストレッチャーの準備を始めました。
救急隊員「隊長、メインの準備できましたよ」
救急隊長「了解、Kさん、腰が痛いところ悪いんだけどここに寝てもらわないと救急隊も病院に連れて行けないんだ、救急隊で身体支えるから少し頑張ってもらえるかな?」
Kさん「大丈夫、少し立ってそこに座るくらいなら力借りなくても平気だよ」
Kさんはそう言うとひょこりと立ち上がりメインストレッチャーに横になりました。腰部痛と言っても動けなくてどうにもならないと言う感じではありません。さあ車内収容しようと思ったら目の前のマンションから大きな声が聞こえてきました。
子ども「どうしたの~?」
Kさん「おう!ちょっと腰が痛くなったから病院に行って来るからよ!」
子ども「あはは、そうなんだ、救急車で、いいなぁ~!」
Kさん「そう救急車でだ!いいだろ~ははは~」
マンションの3階の手すりに登ってこちらに大声を出している子どもさん、それに応えているKさん
救急機関員「あのお子さんはKさんのお子さん?」
Kさん「そうですよ」
救急機関員「ちょっと危ないから手すりに登らないように言ってください、落ちたら大変ですよ」
Kさん「大丈夫、大丈夫だって」
子ども「いってらっしゃ~い!」
Kさん「おう!行ってくるな~!」
大声で声を掛け合っている父子…。Kさんを乗せたメインストレッチャーを車内収容して救急車のリアドアを閉めた。…やれやれ。

 車内収容。
子ども「どこに行くんですか~?」
まだ叫んでいる。
救急機関員「分かったからそこから降りなさい、危ないよ~!」
子ども「大丈夫ですよ~!」
さすが父子、よく似ている…。そんなことを思い救急隊員も救急車内に、Kさんの腰部痛の状況、バイタルサインなどを測定しました。Kさんは腰部痛を訴えており、もともとの腰痛持ち、今日になって持病の腰痛がひどくなったので要請したとのことでした。
救急隊長「そうですか、ではいつもかかっている○病院に連絡取ってみますからね」
Kさん「ええ、お願いします」
機関員が運転席からKさんのかかりつけの病院に連絡を入れる。
救急隊長「でも、Kさん私たちが肩を貸さなくてもひとりで立ち上がれたね、私たちはもう触っただけでも痛がって動けないのかと思いましたよ」
Kさん「いやいや、そこまではひどくないよ、大丈夫」
救急隊長「そうですか、それは良かった。Kさんね、もしどうにか動けるようなら、今度同じようになってしまった時はタクシーとか民間救急車ってサービスもありますからそう言うものも考えてみてください。今はね、救急要請の119番が増えてしまって…」
救急隊長がKさん相手に広報活動をしている。「どの科目に行って良いか分からなかった」とか「病院が分からなかった」などで救急要請する方などにはそういう時にはどうすればよかったかを搬送途上に説明したりします。こういった小さな広報活動の積み重ねが増大し続ける救急要請に歯止めを掛けるには重要です。でもねぇ…隊長マジメだよなぁ、多分この人には無駄な努力になりそう。
Kさん「ふ~ん、そうなんだ大変なんですね、でもオレは腰が痛いから仕方ないね、救急車が足りないのは行政の問題だろうし、オレには関係ないね」
救急隊長「…」
ああやっぱりね。「そんなの関係ねえ!」そうでしょうよ…。
救急機関員「隊長、○病院受入れOKです、出発しますよ」
Kさんをいつもかかっている近所の病院に搬送しました。「腰部痛 軽症」でした。

 帰署途上
救急機関員「そんなの関係ねえって言われちゃったね」
救急隊長「オレも無駄だろうなぁって思ったんだけどね…」
救急隊員「あの子もあのお父さんに育てられるんだから、ちょっとどこかが痛かったら何でもいいから救急車って思って育つんでしょうね」
救急機関員「だろうなぁ、本当、負の連鎖だよな…」
救急隊長「アイツ絶対給食費とか払ってないぜ」
救急機関員「オレもそう思いましたよ、義務教育なんだから給食費もタダなのが当然だって言うタイプですね」
救急隊長「そうそう、他の親がみんな払っていてもそれこそそんなの関係ねえだよな」
絶対ってもう隊長も機関員も言いたい放題、気持ちは同じですが。救急車は住民みんなの共有財産です。不適切に利用すれば誰かが困ってしまう。でも自分以外の誰かなんて関係ねえ、救急車を遠慮なく使う方はみんなこんな感じです。

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