続・熱中症、疑わなかった炎天下

ケーススタディ

この記事は熱中症、疑わなかった炎天下の解答編です。

病院到着

現場から直近の救命救急センターまでは10分程度の距離です。搬送中、バイタルサインに変化はありませんでしたが、Yさんは呼吸苦と締め付けられるような胸の苦しさが強くなってきていると訴えました。救命救急センターの入り口には医師が待ち構えていました。

隊長「救急隊です!お願いします」
救命医「蒼白だね、バイタルに変化ない?」
隊長「ええ、バイタルは連絡した通り変化はありません、ただ、ご本人は呼吸苦と胸の苦しさが強くなってきていると訴えています」
救命医「分かりました、Yさん、こんにちは、お話はできますか?」
Yさん「ハァハァ…大丈夫です」
救命医「ずいぶん苦しそうですね?胸が痛みますか?」
Yさん「ええ…痛いというか…苦しいです」

Yさんは処置台の上に移され医師たちの処置が始まりました。容態変化する事なく医師に引き継ぐ事ができました。

「急性心筋梗塞 重篤」

帰署途上

隊長「これからすぐに緊急オペだって、とても家族が来るまでは待っていられないと電話で奥さんに説明していたよ」
隊員「そうですか、あの冷汗、明らかな心原性ショックでした」
機関員「熱中症って話は何だったのだろうな?」
隊長「状況は熱中症を疑うには十分だったな、おまけに本人がそうだと思うって言うとなると…」
隊員「あの状態だったから選定に迷う事もなかったけど、バイタルがもっと良かったのなら逆に危なかったかもしれない、ピットホールに陥らないで本当に良かった…」
隊長「ああ、そうだな、やっぱり先入観は禁物だな…」


傷病名は急性心筋梗塞、緊急度も重症度も非常に高い緊急事態でした。傷病者の訴えからも熱中症を疑うに十分な状況でした。今回のケースではバイタルサインが悪く、熱中症だろうと思うには違和感がいくつもありました。逆にバイタルサインが整っており、典型的な症状が出ていなかったのなら、あるいは大切な情報を見逃していたかもしれません。先入観は本当に怖いです。たくさんのコメント、深い考察、ありがとうございました。


119番通報する前に1秒だけ考えてほしい、 大切な人がすぐ近くで倒れていないだろうか?今、本当に救急車が必要だろうか?と。
すべては救命のために
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