続・突然の背部痛、足背触れず

ケーススタディ

突然の背部痛、足背触れずの解答編です。

この活動の迷いどころは選定です。3次医療機関か循環器の専門処置ができる医療機関にすべきか。ただ、Tさんお宅の近くには3次の機能もCCUもある大病院ありました。連絡するとすぐに受け入れるとの回答が得られました。

医療機関到着

医師「本当だ、足背動脈が触れない」
隊長「先生、やっぱり大動脈解離でしょうか?」
医師「状況からみれば恐らくはね、すぐCT検査します、見ていきます?」
隊長「ええ是非とも」

Tさんを病院のストレッチャーに移しCT室へと向かいました。モニターに映し出されたのは裂けた大動脈の様子でした。

医師「ああ…解離だ、良い判断でした」
隊長「やっぱりですか、下肢で脈が触知できないのは解離のせいでしょうか?」
医師「この位置だとまだ影響はないと思うけどなぁ、単純に血圧が落ちてきているからかもね、でも両足背動脈の観察は重要ですよ」

医師の判断では解離が及んでいるのは胸部大動脈の下部辺りまでだそうで、痛みが移動したのは解離が進行したからだろうとのことでした。解離はねじれながら進行することが多いそうで、解離が進行していくと下行大動脈への血流を妨げることがあるので両下肢の脈拍触知や血圧の左右差も重要な所見になります。今回の両足背動脈が触知できないと言う観察情報はやはりとても重要でした。

ただ、解離により触知できなかったのではなく、これは単純にショックから血圧が下がったことで触知できなかったのではないかとのことでした。詳しい検査をさらにしないと何とも言えないが、下行大動脈に及ぶほど解離は進行していないのではないかとのことでした。

「急性大動脈解離 重症」

帰署途上

隊長「あの痛がり方はやっぱり解離だったな」
隊員「ええ、背中に痛みっていうからひょっとしてとは思ったけど、肉離れとか筋肉痛もやっぱり十分に考えられる事案だと思いました」
機関員「ああ、中年体型だったし準備運動とかなしにスイングなんてしたらやっぱりそっちを疑うよな?オレは正直、どこが乖離なんだよ、整形に行けって医師に怒られると思った」
隊長「突然発症、移動する背部痛、足背動脈が触れない、今回のケースは解離を疑うには十分な条件が揃っていた、オーバートリアージは容認されないとな」



コメントをいただいた皆さん、ありがとうございました。ほとんどの方が大動脈解離を疑っていました。腹部大動脈瘤破裂や心筋梗塞もあり得るのではとのコメントもありました。確かにあり得ると思います。

大動脈乖離を疑う症状はいくつかありましたが「背部痛の移動」が一番の決め手だったと思います。ただ、パっと見た時の痛がり方がいかにもだったことがもっとも大きな理由であった気がします。過去、大動脈解離の方を何度と扱いましたが、やはりその時の経験が最も大きかったと感じます。

119番通報する前に1秒だけ考えてほしい、 大切な人がすぐ近くで倒れていないだろうか?今、本当に救急車が必要だろうか?と。
すべては救命のために
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