<搬送拒否>消防に賠償命令 奈良地裁

時事ネタ

毎日新聞より引用

奈良県橿原市の中和広域消防組合の救急隊員が、同県大淀町の男性(44)が頭にけがをしていたのに病院に搬送しなかったため、意識不明の状態になったとして、男性と家族が同組合に治療費や慰謝料など計約2億5230万円の損害賠償を求めた訴訟で、奈良地裁(坂倉充信裁判長)は27日、同組合に計約1億3860万円の支払いを命じる判決を言い渡した。坂倉裁判長は「救急隊員は必要性の判断を誤り、搬送すべき義務に違反した。搬送していれば、(意識不明状態という)結果を避けることができた」と、男性側の主張を全面的に認めた。

判決によると、男性は06年11月15日午前2時10分ごろ、橿原市の橿原警察署の敷地内を酔って歩いているところを同署に保護された。駆けつけた救急隊員は声をかけたり、顔に付いた血をふいたりしたが、緊急を要する症状ではないと判断、搬送先を探さなかった。

駆け付けた家族は、同署の東隣にある県立医大付属病院への搬送を希望したが、隊員は「かかりつけじゃないと、なかなか診てくれない」「アルコールが入っているので、受け入れ先がない」などと説明。家族は、不搬送の承諾書に署名、男性を連れて帰宅した。ところが男性は帰宅後に容体が急変、午前11時ごろ県立医大付属病院に運ばれ、脳挫傷などと診断された。男性は現在も意識が回復しない状態が続く。

判決では、搬送について「顔面や衣服に付着するほど出血し、発見当初と比べて意識障害の程度が重くなっていることを容易に認識できた」などと必要性を認めた。家族が不搬送承諾書に署名したことについては「依頼したのにできないとされた結果として、やむを得ずした対応」として、家族が搬送を拒否したとは認めず、救急隊員は搬送する義務を免れないとした。

男性側の弁護士は「極めてまれな事例だが、よほどの理由がない限り搬送すべきだという当たり前の判決だ」と述べた。

中和広域消防組合の橋本雅勇消防長は「主張が認められなかったことは誠に遺憾。今後の対応を慎重に検討したい」とのコメントを発表した。

2009年4月27日毎日新聞より引用




救急隊は119番通報要請されれば搬送を原則とすることが改めて確認された判決です。また家族の署名など何の根拠にもなり得ないということも改めて確認されました。

「アルコールが入っているので、受け入れ先がない」と搬送を拒否したとされる救急隊にも問題はあったと思いますが、アルコールが入っていると受け入れ先がなかなか見つからないのは事実です。

これは厚生労働省の調査でも明らかです。「今日の当直医はお酒を飲んでいる方は診ない方です」とか、「当院はアルコールが入っている方は診ない方針ですから」などそんな理由で断る医療機関もあるのです。医療機関にも診察を求める者がいる場合、診察を断ることはできない原則があるはずなのですが…。

とはいえ、酩酊者を受け入れると…、以前こんなことがありました。

救急隊員「救急隊です、患者さんの受け入れ要請なのですが」
看護師「今、先ほど○救急隊が搬送してきた酔っ払いの患者さんが暴れているの、医師も看護師もみんなそちらにかかっています、受け入れはできません、私も電話に出ている場合じゃないのよ!」

ガチャ…ツーツー…電話が切れた。酔っ払いを受け入れた場合、こんなことがたいへん多く、この病院の受け入れはストップしてしまいます。それどころか、他の患者さんの診察もストップしてしまいます。私たち救急隊が一部の奉仕者でないのと同じように、医療機関だって一部の患者のためにある訳ではありません。

診察を求めるものがいる場合、診察を拒むことはできないという原則を守るためには、一部の酔っ払いにかかりきりになるなんて許されないことなのです。ただ、現実はかかりきりにならざるを得なくなってしまう…。アルコールが入った人はなかなか受け入れることができないずです。

救急隊は要請されれば駆けつけ搬送せよ、医療機関は患者を受け入れよ、その原則をしっかりと守れ!それを追求することも必要でしょう。ただ、それを守るための体制作りが置き去りになっていると感じずにはいられません。トラブルや訴訟のリスクにさらされ現場が疲弊していっています…。

大人だから飲むことができるアルコール、だからこそトラブルを起こさず、怪我などもせず自分で自分の足で自宅に帰る、これこそ自己責任なのでは?そんな当たり前も今一度確認したいものです。

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