急性アル中、精神疾患など受け入れ困難

時事ネタ

「急性アル中」「精神疾患」などは救急受け入れ困難

総務省消防庁が東京消防庁管内で実施した救急受け入れに関する実態調査によると、受け入れが断られやすいとの指摘がある急性アルコール中毒や精神疾患の患者、未受診妊婦などの場合、受け入れ照会が4回以上となるケースが32.5%と、救急搬送全体の8.3%を大きく上回り、現場滞在時間も長くかかるなど、受け入れが実際に困難である実態が明らかになった。受け入れ困難の詳細な理由についても調べており、こうした調査は国レベルでは初めて

調査は、昨年 12月16日から7日間、東京消防庁管内のすべての救急搬送9414件(転院搬送除く)について実施された。消防庁は昨年、これに先立ち救急受け入れについての実態調査をしていたが、受け入れ困難理由を詳細に分析する必要があるとして、東京消防庁管内でさらに調査を実施。消防庁で救急搬送の在り方などについて議論している作業部会に報告した。

調査項目は、受け入れ照会回数や、受け入れられなかった理由とその件数など。さらに、一般的に受け入れが断られやすいとされる傷病者の特徴や疾病として、▽急性アルコール中毒▽精神疾患▽結核▽感染症▽薬物中毒▽産科・周産期(定期的受診・ほとんど未受診・未受診)▽透析▽認知症▽要介護者▽過去に問題のあった傷病者▽CPA▽吐血▽開放性骨折▽複数科目―のいずれかの項目に該当するかも調べた。

こうした項目に該当した搬送ケースは566件と、救急搬送全体の6%で、647件の受け入れ照会が発生していた。受け入れ照会数を見ると、「1回」が36.2%(205件)、「4回以上」が32.5%(184件)、「6回以上」が17.7%(100件)、「11回以上」が5.1%(29件)などだった。3回以内の照会で受け入れられたのは67.5%。受け入れ照会の最大回数は、救急搬送全体で見ても最も多かった25回で、特徴や疾病としては「要介護者」の区分だった。

照会が最も多く発生している区分は「精神疾患」で、照会件数の24.0%を占める155件だった。次に、「急性アルコール中毒」が23.5%で152件、「複数科目」が10.7%で69件、「認知症」が10.0%で65件、「要介護者」が9.4%で61件などと続いた。

受け入れられなかった理由として、最も多かったのは、「手術中か他の患者に対応中」で24.8%、以下は、「処置困難」23.7%、「ベッド満床」20.1%などと続く。

■全体の約7割が1回で受け入れ

救急搬送全体を見ると、受け入れ照会が「1回」が70.4%(6632件)、「4回以上」が8.3%(779件)、「6回以上」が3.1%(291件)、「11回以上」が0.6%(60件)などと、一般的に受け入れが断られやすいとされる搬送ケースの照会数を大きく下回っている。91.7%が3回以内の照会で受け入れられていた。

受け入れられなかった理由として、最も多かったのは「手術中か他の患者に対応中」で31.5%。以下は、「処置困難」18.8%、「ベッド満床」18.0%などと続く。

現場滞在時間を比較すると、一般的に受け入れが断られやすいとされる搬送ケースでは、「30分以上」が39.7%、「60分以上」が8.2%だった。全体では、「30分以上」が12.3%、「60分以上」が1.1%で、一般的に受け入れが断られやすい搬送ケースの方が受け入れ先を探すのに時間がかかっていることが分かる。

■小児のケース、対応可能医師の不在も

全体のうち、「重症以上」のケースが737件あった。「1回」で受け入れが決まったのが71.9%で、「6回以上」となったのは2.3%。受け入れられなかった理由としては、「手術中か他の患者に対応中」と「処置困難」がそれぞれ27.9%、「ベッド満床」が23.5%など。

また、「小児」のケースは680件あった。受け入れ照会回数は「1回」が77.4%、「6回以上」は1.2%。受け入れられなかった理由では、「手術中か他の患者に対応中」が33.5%と最多で、以下は「処置困難」19.1%、「(医師が)専門外」15.5%、「ベッド満床」13.7%などと続いた。

このほか、65歳以上の高齢者の搬送が3894件と、全体の41.4%を占めていた。受け入れ照会は「1回」が74.1%、「6回以上」が2.5%、「11回以上」が0.5%と、救急搬送全体に比べ全体的に照会数が少なくなっている。ただ、傷病の発生場所を「老人ホームなど」の施設に限定した場合、「1回」が72.2%、「6回以上」が3.9%、「11回以上」が1.8%と、65歳以上の高齢者の搬送全体と比べ照会数が多くなる傾向があった。

■救急医療と福祉行政のかかわりを

作業部会の事務局は、一般的に受け入れが断られやすいとされる搬送ケースについて、「受け入れ照会回数、現場滞在時間とも全体平均を上回っており、(受け入れ先の)選定困難事例となりやすいと思われた」との見解を示した。

作業部会の会合で有賀徹氏(昭和大医学部教授救急医学講座主任)は、「社会的弱者になっている人たちを救急隊が取り扱いかねていることが分かった。このデータを今後どう使っていくか。これは厚生労働行政にも深く関係している」と、調査結果を今後の行政での検討に生かすべきと主張。横田順一郎氏(市立堺病院副院長)は、救急医療と精神疾患に関する団体との連携などを提言していくきっかけになると強調した。

これに対し、消防庁の開出英之救急企画室長は、「データをどう生かすということが大事。搬送の中で処理できること、(患者の)出口や、福祉が絡むことなどがある。われわれだけでできないポイントがあるので、そこにつなげていきたいと思う」と述べた。

このデータは、来年度にも開催される消防庁と厚生労働省の合同の検討会で資料として使われる見通しだ。

2009.2.24 医療介護CBnews記事よりの引用


2009年2月24日の医療介護CBニュースの記事です。

受入れ困難事案の理由の調査が行われました。当サイトでもいつも紹介している通り「急性アルコール中毒」「精神科疾患」、さらに「認知症」「介護施設の利用者」などが受入れ困難に上がっていることがデータになりました。

データを収集しきっかけにすることは大切ですが、現場の者ならいつも肌で感じていることです。こういった調査、データを基に画期的な対策が採られる事を願っています。

それにしてもこの記事「受入れ拒否」ではなく「受入れ困難」としているところが非常に良いと感じました。マスコミの伝え方も少しずつ変わってきたのでしょうか。


119番通報する前に1秒だけ考えてほしい、 大切な人がすぐ近くで倒れていないだろうか?今、本当に救急車が必要だろうか?と。
すべては救命のために
この記事に対するご意見・ご感想をお待ちしています。SNSでのコメントを頂けると嬉しいです。

@paramedic119 フォローお願いします。