時事ネタ
延命中止、有罪確定へ 家族に適切情報伝えず 殺人罪の成立認定
川崎協同病院(川崎市)で意識不明の男性患者=当時(58)=が一九九八年、気管内チューブを抜かれ、筋弛緩(しかん)剤を投与され死亡した事件で、殺人罪に問われた元同病院医師須田セツ子被告(55)について、最高裁第三小法廷(田原睦夫裁判長)は、被告の上告を棄却する決定をした。懲役一年六月、執行猶予三年とした二審東京高裁判決が確定する。決定は七日付。
終末期医療をめぐり、医師が刑事責任を問われた事件で、最高裁が判断を示したのは初めて。
決定は「被告は患者の余命などを判断するために必要な脳波検査などをしておらず、患者の回復可能性や余命について的確な判断を下せる状況になかった」と指摘。患者の家族の要請でチューブを抜いたと認定したが、「家族に病状の適切な情報が伝えられておらず、患者の意思に基づく行為ともいえない。法律上許される治療中止には当たらない」と判断し、殺人罪の成立を認めた。
被告側は「患者の意思を推定できる家族から要請されて延命治療を中止した」として、無罪を主張していた。
一審横浜地裁判決は、被告を懲役三年、執行猶予五年としたが、二審東京高裁判決は「家族の要請で決断したもので、それを事後的に非難するのは酷な面もある」として、一審判決を破棄、当時の殺人罪の量刑としては最も軽い懲役一年六月とした。
決定によると、男性患者は九八年十一月二日、ぜんそくの発作を起こし、同病院に搬送され、昏睡(こんすい)状態のまま入院。
同十六日、須田被告は気道を確保していたチューブを外した後、看護師に指示して筋弛緩剤を注射し、窒息死させた。
◆国、司法指針示せず
川崎協同病院事件での最高裁決定は、あくまで個別の事件について判断を示したもので、一般的な指針とはならない。二〇〇七年二月の二審東京高裁判決が須田セツ子被告の量刑を一審より軽くしたのは、事件当時、延命などの治療中止の法的規範も医療倫理も確立されていない現状を重く見たからだ。判決は「尊厳死(治療行為の中止)の問題を根本的に解決するには、尊厳死を許容する法律やガイドラインの策定が必要だ」と付言していた。
終末期医療をめぐる司法判断では、一九九一年に神奈川県の東海大病院で、主治医が末期がん患者に塩化カリウムなどを注射、患者が死亡した事件で、横浜地裁判決(九五年、確定)が安楽死が認められる要件として(1)患者に耐え難い苦痛がある(2)死期が迫っている(3)苦痛を除去・緩和する他の手段がない(4)本人の意思表示がある-の四点を提示した。
厚生労働省は〇七年、終末期医療に関するガイドラインをまとめたが、刑事事件など法的側面については「引き続き検討が必要」とするにとどまっており、最終的な判断は、医療現場任せの状況が続いている。
〇六年には富山県の射水市民病院で、末期患者七人が人工呼吸器を外されて死亡したことが発覚。県警は昨年、医師二人を殺人容疑で書類送検したが、刑事処分は決まっていない。同様に呼吸器を外した北海道立羽幌病院と、和歌山県立医大病院紀北分院の問題では、いずれも医師は不起訴となった。
◆須田被告「残念」 「司法に伝わらず」
須田セツ子被告は九日、横浜市港北区で開業している診療所で東京新聞などの取材に応じ、「上告棄却は、正直言って残念だ」と淡々とした表情で切り出した。
「司法に、現場の気持ちが伝わらないことが、はっきりした」と話し、「余命というものは、そばにいる人が感覚で感じるものだから」と、言葉を継いだ。
「(今回の司法判断で)見て見ぬふりをし、触らない、自然に任せるというマイナスの医療が多くなるのでは」と話した。
◆極めて判断妥当
秋葉悦子富山大教授(医事法・刑事法)の話 極めて妥当な判断で、これしか言えなかったのだろう。二審の東京高裁は「(尊厳死の問題は)司法が抜本的な解決を図るような問題ではない」と踏み込んで指摘しており、最高裁が要件を決めてしまうと、医療現場がマニュアルで動くようになってしまう危険性があった。今後、さらに国民の間で広く議論していく必要がある。
2009.12.9 東京新聞夕刊からの引用記事
終末期医療をめぐり、医師が刑事責任を問われた事件で、最高裁が判断を示したのは初めての事件になるとのこと。結論は有罪、尊厳死の問題に関しては法律はもちろん国の指針も具体化しておらず、現場の医師は守ってもらえないことが確定したと言うことでしょうか?
殺人罪で有罪になるかもしれないと言う状況に、回復の見込みのない患者に対して、もはや治療とは言えない行為が続けられる…そんなことも増えるのかもしれません。
119番通報する前に1秒だけ考えてほしい、 大切な人がすぐ近くで倒れていないだろうか?今、本当に救急車が必要だろうか?と。
すべては救命のために
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