119番受信時の「コールトリアージ」導入4割 意見割れる消防機関

時事ネタ

119番受信時の「コールトリアージ」導入4割 意見割れる消防機関

 大規模災害時に殺到する119番に対応するため、通報内容から出動の優先順位をつける「コールトリアージ」の導入の有無について都道府県庁所在地や政令市を管轄する52の消防機関に毎日新聞がアンケートしたところ、回答した47機関のうち、「導入済み」と答えたのは約4割の19機関にとどまることが判明した。

 14日で発生から9年となる2016年4月の熊本地震や24年1月の能登半島地震では、被災者から平時をはるかに超える119番が集中。優先順位をつけるための明確な基準がないまま、出動を断る判断を現場に強いるケースも生じ、心理的負担につながった。

 総務省消防庁は05年度以降、コールトリアージ導入の本格的な検討を始め、医学的知見を取り入れた手順などを示しているが、導入の判断は各地の消防機関に委ねている。一部は導入を積極的に進める一方で、緊急性のある通報の見落としにつながりかねない懸念などから二の足を踏む消防機関もあり、定着が進まない現状が浮き彫りになった。

 アンケートは3~4月に実施し、東京消防庁▽青森地域広域事務組合消防本部▽福井市消防局▽名古屋市消防局▽大津市消防局――を除く47機関が回答。19機関がコールトリアージを導入し、2機関が今後の導入を目指すとした一方、18機関が未導入だった。8機関は平時でコールトリアージを導入していても災害時での活用を想定していなかったり、似たような取り組みをしていたりするとして「その他」と回答した。

 導入理由を尋ねたところ、「限られた消防力のなかで効率的な部隊運用を図るため」(徳島市消防局)など、人員や車両の円滑な運用が目的だとする回答が目立った。大阪市消防局は、新型コロナウイルス禍で救急要請が急増したことを契機に導入した。高知市消防局は南海トラフ地震などでの対応も想定する。

 「導入済み」と回答したうち、14機関が職員向けに手順などを記したマニュアルも作り、熊本市消防局は熊本地震、岡山市消防局は西日本豪雨(18年7月)という大規模災害を経験したことが整備につながった

 一方、未導入の消防機関からは、出動が必要な事案の見落としを懸念する声などが出た。盛岡地区広域消防組合消防本部は「電話口でけが人の状況や状態を判断するのは難しい」と回答。相模原市消防局も「通報時の状況のみで指令員が緊急度を判断することは困難だ」とした。判断結果で、訴訟リスクを抱えることを懸念するところもあった。

 アンケートとは別に、能登半島地震で被害が大きかった石川県の奥能登4市町(輪島市、珠洲(すず)市、能登町、穴水町)を管轄する奥能登広域圏事務組合消防本部にも聞いたところ、地震時は導入の検討段階で、災害後の24年4月に導入しマニュアルも整備した。同年9月の豪雨災害では実際にコールトリアージを実施し、緊急度に応じて対応を決めたという。

 一方、地震時の対応について「災害規模、現有消防力によっては(処理能力の限界を超えてしまい)トリアージを機能させることが難しい」と課題を挙げた。

 防災行政に詳しい片田敏孝・東京大大学院特任教授(災害情報学)は「119番対応は平時と災害時を分ける必要がある。災害時にコールトリアージは不可欠だと考えるが、優先順位をつけることへの社会の理解が得られるか、あるいは緊急度を判断する基準をどう設定するかという課題に自治体や消防機関が向き合うことが求められる。アンケート結果が割れたことは、そうした課題を解決する難しさを物語っている」と指摘する。【中里顕、山口響】


コールトリアージ

119番の通報内容から生命の危険性に応じて「緊急(赤)」「準緊急(黄)」「低緊急(緑)」に判別し、より緊急度の高い通報者に人員や救急車を出動させる仕組み。救急出動件数が増え続けるなか、現場への到着時間や救命率の水準を維持するための対策として議論されてきた。

2025.4.12 毎日新聞記事からの引用



119番通報に関する全国消防本部への毎日新聞のアンケート結果のついて、2025年4月12日の毎日新聞記事からの引用です。毎日新聞さん、いつも有益な取材をありがとうございます。

大規模災害時の119番通報時のトリアージ(選別する)を導入している消防本部としていない本部がある。アンケートに答えた本部の4割が導入済みとのことです。

興味深いのが既に大規模災害を経験している本部で導入が進んでいると言うこと。119番への対応が全くできなくなってしまった経験があるからこそ、重い腰を上げざるを得なくなったと想像してしまいます。

大阪市消防局ではコロナ禍の救急要請の急増に契機に導入しています。真夏の熱中症患者、冬季のインフルエンザ蔓延期は全国的に慢性的に救急車がひっ迫しています。大規模災害時に準じてコールトリアージを導入しないと救えない命も増えていくのではないでしょうか。

一方で二の足を踏む消防本部がある事情も本当によく分かります。通報は不適切な内容なのだろうと想像して向かってみたら重傷の傷病者だった、こんなヒヤリの経験を幾度としています。電話で緊急度、重症度を判断するなど本当に難しい。訴訟リスクを考えると導入に腰が引けるのもよく分かります。

国は05年からコールトリアージの本格的な導入を検討を始め20年が経ち、導入の判断は各地の消防機関に委ねられている。大規模災害に限らず、増え続ける通常の救急要請数も既に本来助けられる命を助けられないところまで来てしまっているとしか思えない状況にまで至っています。(よーいドンで出られない事案や切れてしまった鎖の事案など)全国的な統一基準が必要な時期に来ているのかもしれません。

コールトリアージの導入について皆さんはどう思われますか?コメントをいただけると嬉しいです。


119番通報する前に1秒だけ考えてほしい、 大切な人がすぐ近くで倒れていないだろうか?今、本当に救急車が必要だろうか?と。
すべては救命のために
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