救急車サイレンに「苦情」 騒音なのか?

時事ネタ

救急車サイレンに「苦情」 もはや命さえ騒音なのか? 91万件超の出動が示す“共存”と“静寂”のジレンマ

救急車サイレン苦情増加の背景

東京消防庁への苦情は年々増加しており、そのなかには「救急車のサイレン」に関する苦情も一定数含まれている。これを受け、住民への配慮を最大限にしつつ救助活動を行うため、救急車のサイレンは日々改良が進められている。

緊急自動車の運用は、「道路交通法」第14条のほか、「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」(以下、細目告示)の第49条や第231条により詳細な基準が定められている。救急車が緊急自動車として走行する際は、

・サイレンの吹鳴
・赤色警光灯の点灯

が義務付けられている。

これには、通行時の事故防止や迅速な搬送のための協力促進が主な理由として挙げられる。東京消防庁は、周囲への注意喚起としてサイレンの吹鳴は必要と考えている。

一方で、緊急性や周辺の住環境、交通状況に応じてサイレンをオフにし、一般車として移動する場合もある。消防庁関係者は、住民に不要な混乱を与えないようサイレンのオン・オフを判断し、配慮しながら救急活動を行っている。

東京消防庁が公表した2023年の「救急活動状況」によると、救急出場件数は91万8311件で、前年度より4万6236件増加した。そのうち、軽傷者と判断されたケースは54.2%(41万9723件)、搬送不要とされたケースは15.7%(14万3941件)に上る。

この数字から、緊急性の高い通報が相対的に少ない傾向が見て取れる。しかし、すべての通報に対し救急車は緊急自動車としてサイレンを吹鳴しながら出動する義務がある。

一方、75歳以上の高齢者の搬送は全体の34.1%(31万2953件)を占めている。超高齢化社会の進展により、出動件数とサイレンに対する苦情は今後さらに増加する見込みだ。

これを踏まえ、救急関係者は住民のストレスや疲労を軽減するための対策を一層強化する必要がある。

救急車サイレンと事故リスク

サイレンに対する苦情の増加は、騒音によるストレスだけでなく、

「近年の社会状況の変化」

も影響していると考えられる。現代は不安感やストレスを感じやすい環境であり、自己コントロールが難しい人が増加していると指摘されている。

東京消防庁が2025年3月に公表した「都民の声」では、770件の意見が寄せられ、そのうち180件(23%)が苦情である。サイレンに対する苦情も含まれ、多くの消防機関で同様のクレームが相次いでいる。通報者以外にも、匿名の第三者からの苦情が多数届いており、ストレス発散目的のケースもあると推測される。

こうした状況を踏まえ、救急活動では騒音対策だけでなく、地域コミュニティーの改善も重要な課題となる。

救急車は大音量のサイレンを鳴らしても衝突事故が発生する。近年の自動車は遮音性が高いほか、エアコンや音楽機器の使用により、すれ違う直前まで外部の音に気づきにくい傾向が強まっている。

このため、衝突事故を防ぐ観点から、夜間の住宅街でもサイレンを止めることはできない。さらに、気づいてもらうためマイクによるアナウンスも実施している。しかし運転中に注意喚起が聞き取りにくいという声も多く、音量の見直しを求める意見も一定数ある。

一方で住宅はオフィスに比べて遮音性が低く、大音量のサイレンが騒音問題になりやすい。また夜間は気温が低く、音波の屈折が少ないため遠くまで音が届きやすい。そのため、一軒家が密集する住宅街近くの主要幹線道路や交差点でのサイレン音は苦情の原因となりやすい。

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2025.7.20 Merkmal記事から引用



2025年7月20日のMerkmalからの引用記事です。

救急車のサイレンに関わる苦情はずっとあります。以前このサイトでも、選挙の演説が聞こえないからと苦情があった話や常習者と呼ばれる救急車を頻回要請する方の近所の住人からの切実な要望の話など紹介させてもらったことがあります。

サイレンの吹鳴は法律に決まっていることで法令遵守の観点からも止めるわけにはいきません。…とは言え、消防署の近所に住む住人からすれば昼夜問わずの騒音です。記事にもある通り、「社会のインフラ」の一部と誰もが認識してくれれば本当に良いのですが…それはとても難しいです。

119番通報する前に1秒だけ考えてほしい、 大切な人がすぐ近くで倒れていないだろうか?今、本当に救急車が必要だろうか?と。
すべては救命のために
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