救急救命士の仰天現場 case1
腐っていたおじいちゃん
私がまだ消防官になりたてのころの話です。私の勤務する消防署では重症が予想される場合、または直近の救急隊が出場していて待機している消防隊が先着できる場合など、救急現場に消防車が出動することがあります。この試みは全国の消防署で取り入れられてきています。当時、消防隊員だった私はこのポンプと救急との連携指令を受けて出動しました。指令内容は「お年寄りの男性、自宅居室内にて呼吸も脈拍もない模様」と言うものでした。現場に駆け付けた我々消防隊と救急隊は同着、玄関には若い女性が呆然と立ち尽くしていました。救急隊長、救急隊員のあとに続いてお年寄りのいる部屋に入った私の目には信じられない光景が広がっていました。
布団に横たわったおじいちゃんは腐乱、腐敗の状態だったのです。真冬の時期だったので臭いはそこまでひどいものではありませんでした。明らかに亡くなっている状況ではありますが我々には観察し社会死(社会通念上死亡である状態)である確信が必要です。私は救急隊とともにおじいちゃんのもとへ行きました。おじいちゃんの体は硬直状態を通り過ぎむしろ柔らかい状態、なんでも遺体は死後硬直を通り過ぎると柔らかくなるそうです。まぁここまではよくある変死体なんですけど、私が仰天してしまったのはこのおじいちゃん目玉がなかったんです。ミイラ状態といいますか、まさに両目がくりぬかれた様になかったんです。なんでそんな風になったのか??私はこの乾燥の時期、水分の豊富な目玉は亡くなると水分が蒸発してしぼんでしまうものなのかと思いました。またこのおじいちゃんのおかしかったところは喉の部分にスッポリ穴が開いるんです。これも気管切開かなにかの在宅医療でも…でも在宅医療を受けているような人がこんな死に方するのかなぁ?
なにより一番疑問に思ってしまったのが、このおじいちゃん家族と同居していたんです。正確に言えば同じ家ではなく同じ敷地内に家を建てて、でもまぁ30秒あればおじいちゃんの様子は見に行けるところに家族は住んでいたんです。到着時、自宅玄関で呆然と立ち尽くしていた若い女性は同じ敷地内に住む家族でした。正確な死亡時刻などは警察の仕事ですので分かりませんけど、あの寒い時期にあれだけ腐敗が進行していたことから最低でも死後5日以上の時間が経過していたと思われます。同じ敷地内で家族が腐って死んでいるのに気づかない…。都会の闇を垣間見た思いでした。
活動を終えた私はベテランの救急隊の方になんで目玉がなかったのか喉に穴が開いていたのかを質問しました。「まだまだ観察ができていないなぁ、お前布団見たか?かじった後がたくさんあったの分からなかったか?絶対じゃないけどさ、あれは多分ねずみだよ。目玉が水分も多いしねずみにとってはごちそうじゃないのか」同じ敷地内に家族が住んでいるのにおじいちゃんがねずみに目玉を食われて死んでいる。家族って何なんでしょうか?
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