サイト理念

緊迫の救急現場

救急車の適正利用について

Chain of Survival
救命の連鎖という意味です。

救急車の中ではいったいどんなことが起こっているのか?救急車が今もこの時、どのように利用されているのか?果たしてそれは正しい使い方なのか?救急車の利用状況は年々増え続けています。


救急車の利用状況

例として政令都市の救急車の利用状況を見てみます。東京消防庁の1年間の救急出動件数は約80万件、東京の人口が約1400万人ですから、一年間に17人に一人が救急車を利用している計算になります。(参考:東京消防庁)同じように見ていくと、大阪市ではなんと市民15人に一人が(参考:大阪市消防局)、横浜市では18人に一人が(横浜市消防局)、他にも…

札幌市 約22人に一人(札幌市消防局
仙台市 約23人に一人(仙台市消防局
川崎市 約27人に一人(川崎市消防局
神戸市 約24人に一人(神戸市消防局
福岡市 約22人に一人(福岡市消防局

都市部で多い傾向はありますが、全国でみても20人程度に一人が利用している計算になります。(総務省消防庁)20人と言えば小学校の1クラスに1~2人は1年に1度以上は救急搬送されていると言えばイメージしやすいでしょうか?しかし、みなさんの周りにここ1年、そんなに救急車に乗った人などいるでしょうか?


救急要請増加の要因

救急要請が増加する要因には高齢化社会など様々な要因があります。その中でも統計で明らかになっていることがあります。

救急要請の内訳で、中等症(命に別状はないが入院を要する程度の症状)以上の占める割合は実は横倍状態なのです。

では何が増えているのか、その日のうちに自身で家に帰ることができる軽症傷病者の割合が増え続けているのです。

救急車に乗れば急患扱いとなり先に診てもらえる。順番待ちをしないでCTスキャン、レントゲンなどの検査が受けられる。そして何より寝ていれば無料で病院を選んでくれて運んでくれる。

こんなに良いサービスが他にあるでしょうか?一度使ったら止められないというのもうなずけます。


限りある住民の共有財産

「今日も何となく気分が悪いから一応、呼びました」と年間100回以上も救急車を呼ぶ奥さん。

「入院できる病院に行けるまでオレは何度でも119番するぞ」今日はこれで3回目の救急要請をした方は強い口調でこう言います。

「今日○病院に入院予定なんだけど動けなくなっちゃったから」とすっかり身支度を整えて玄関で待っているおばあちゃん、化粧までしている…。

こういう方々が利用している間にその近所で心臓が止まった方がいたのなら次に遠いところから、そこの救急車も出動中ならさらに遠いところから。一刻を争うその現場に救急車は明らかに迅速に到着できなくなっていきます。

よく119番から5分程度で救急車が到着すると聞きますが、それは直近の救急車が出動できた場合の話です。状況によっては10分20分到着しないこともあるのです。

これが人口の少ない地方都市の話ではなく、数km半径の中に必ず一隊以上の救急車が配備されている大都市部での話なのです。そして特に大都市部に住む方は知ってほしい、直近の救急車が待機していることの方がまれな時間帯もあるのです。

救急車は有限です。救急車は限りある住民の共有財産なのです。


あの時の悔しさを忘れない

「5ヶ月のお子さん、CPA(心肺停止状態)の模様」

消防車で先着した私は必死に赤ちゃんの心臓マッサージをしました。必死に人工呼吸をしたのでしょう、赤ちゃんの吐いたミルクで口の周りを汚したお母さんは半狂乱状態でした。

「近くの救急車は全て出場しております。今、○消防署の救急隊がこちらに向かっています。救急隊が到着するまで我々消防隊が救命処置をいたします」

どんどん蒼くなっていく赤ちゃん…。救急隊が到着したのは通報から約15分、今にも倒れそうなお母さん、すっかり蒼くなった赤ちゃんは病院で亡くなりました。一刻を争う小さな命は迅速に病院に搬送されることなく失われました。

近くの救急車は全て出場しております…。救急車到着まで15分、地獄の時間…。

消防車はあくまで消防車、傷病者を搬送する手段を持っていません。また、救急車に比べると救命処置できる資器材、また法律上できる処置もずっとずっと制限されます。

いったい何をするために消防官になったのだろう?悔しくて悔しくて…私は救急隊員になりました。目の前で一刻を争う赤ちゃんが亡くなった、助けることが出来なかった…。あるいは直近の救急隊が駆けつけたとしてもダメだったかもしれない、でもあるいは助かったのかもしれない…。


救命の鎖とは

Chain of Survival 救命の連鎖とは「早い通報」「早い応急処置」「早い救急処置」「早い医療処置」大切な命を救うためにこれらの必要な行動を途切れることなく行う重要性を表します。

1つもかけてはならない、鎖の様に連なることで意味を成す。今、その鎖が切れ掛かっている…。

救急車が早く到着できなければ早い救急処置、早い医療処置ができない。救急車を使う時に少しで良いから考えてほしいのです。ひょっとして近所で大怪我している人はいないだろうか?今、すぐ近所で自分の大切な人が一大事だったら?


当サイトの目的

全国の自治体が救急車の適正利用を訴えています。でも、伝えるって難しい。何で適正な利用が必要なの?適正な利用って何?それを少しでも伝えたい、少しだけでも考えてもらいたい。

当サイトの目的はここをご覧のみなさんが普段知ることのない救急現場を知ってもらうことで「本当に必要な時、本当に必要な人が救急車を利用できるように」とほんの少しだけ考えてもらうことを最大の目的としています。


サイト理念

119番通報する前に1秒だけ考えてほしい、 大切な人がすぐ近くで倒れていないだろうか?今、本当に救急車が必要だろうか?と。

すべてのは救命のために