救急救命士のため息現場 case1
ホームレス三昧
2月、日本は冬、こんな日に雨なんか降ると大変です。先日の夜はそれはそれは寒く、雨に雪が混じる最悪の状況でした。こんな日、おうちのない方は暖かい食事、部屋を求めます。まぁそれは分かるんです。そりゃこのくそ寒い中、外にいたら大変ですよね。で、どうするかっていうと119番通報をするんです。この前の夜は夜中から朝方にかけて3件の出場がありその全てがホームレスでした・・・。目的は入院し暖かい部屋と暖かい食事にありつくこと。
1件目、まだ日が開ける前、11時過ぎ、K駅南口公衆電話からの通報。公衆電話か…。行ってみるとやっぱり。
救急隊「どうされました?」
ホームレスH「寒い。」
あんまりストレートで逆にビックリ!
救急隊「寒くて救急車呼んだの?」
ホームレスH「そうです。」
救急隊「あのね、救急車は緊急に病院に連れて行く必要のある人のためにあるんです。寒いのは病院じゃ診てくれないよ。」
ホームレスH「じゃあ胸が痛い…。」
救急隊「じゃあってあなたねぇ」
…当然のように病院選定に時間がかかり裕に2時間以上、消防署に戻ったのは日があけていました。ホームレスHもちろん軽症、歩いて帰りました。
2件目、2時ちょっと前、T駅前○銀行前公衆電話からの通報。公衆電話か…。行ってみると身なりはそれなりにきれいだけどやっぱりホームレス。いろいろ聞くと結局はこれ。
ホームレスG「入院できるところを探してほしいんだけど」
救急隊「あのね、救急隊が入院させてほしい病院探すことなんてできませんよ。それは先生が決めることです。診察してもらって先生が必要だって判断したら入院になりますけど、そうじゃなかったら帰ってもらいますよ。」
このホームレスはグダをまくわけでもなく、近隣病院のブラックリストにも載っているわけでもなく、わりとすんなり病院収容できました。もちろん軽症、歩いて帰りました。
3件目、4時ちょっと過ぎ、1件目とおんなじK駅南口、今度は交番からの通報。行ってみると今度は30代くらい男性。身なりも汚いわけでなく一見ホームレスには見えない。救急隊が来たのを見かけるや警察官と共に歩いて救急車にやってきました。
救急隊「どうされました?」
ホームレスT「熱があるんです。」
確かに発熱はあるもバイタルはその他、正常。
救急車「他に調子の悪いところはありませんね?じゃあ発熱を診てもらえる病院を救急隊で探しますよ」
ホームレスT[あの、私先週、○県から出てきましてお金がないんです。」
救急隊「今はどちらにお住いなんですか?」
ホームレスH「家はありません。来週から仕事しますのでそれまで入院させてくれる病院を探してください」
はぁ…やっぱりそれかよ。
救急隊「・・・あのね、入院するかどうかは私たちが決めることじゃなくお医者さんが診察して決めることです。救急隊が入院できる病院を選ぶなんてことできませんよ」
ホームレスH「はぁ?じゃあ家もお金もないのにこの雨の中、どうしろっていうんですか!(かなり強い剣幕!)」
救急隊「・・・」
(はぁ?あなたお金持っていないのにそもそも診察してもらおうってどうかしてませんか?めちゃめちゃ元気じゃないの?)救急隊はそんなこと言えません…。
警察官「Hさん、さっきからずっと言っているけどさ、あんた言っていることむちゃくちゃだよ!」
このホームレスH、もちろん軽症、歩いて帰りました。
夜中の出動は3件、こんなのばっかりでした。僕らの受け持つこの地域に心停止の患者さんが出たら?もちろんもっと遠くの救急隊が扱うことになります。一刻一秒を争う患者さんがこの周辺にいたのなら、きっと助けることはできない。たくさんの助けられたかもしれない命がこういった人たちのために迅速な救急処置を受けられずにいます、いつもいつも。迅速な処置が受けられたのなら直近の救急隊が対応できていたのなら助かっていたのか否かなんてたられば論です。そんなことは分かりませんけど、こういった人たちのために間違いなく死んでいる人がいるんです。毎日たくさんの人が死んでいますよ信じられないくらい。夜中中、ずっとこんな人たちにかかりきりでしたよ…。これ、この日はたまたま全部ホームレスでひどいようですが、これと大差ないような日がしょっっちゅうです。助けたい命は助けられません・・・。
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