ケーススタディ
この記事は最近、ボケてきちゃったみたいでの続編、回答編となります。
現場にあった様々なヒントを元に、隊長は直近の脳神経外科を選定を下命しました。70代の男性、ひと月ほど前の頭部打撲、歩行障害、まるで救急救命士国家試験の臨床問題にでも出そうな典型症例です。
医療機関到着
医師「なるほど、で、慢性硬膜下血腫を疑ったと」
隊長「はい、約ひと月前の頭部打撲、歩行障害、年齢的にももっとも疑わしいかと」
医師「確かにそれは相当に疑わしい、CT見ていきますか?」
隊長「ええ、是非とも」
CT室
CTスキャナーの検査台に移されたSさん、モニターには輪切りになったSさんの頭部映像が徐々に映し出されました。
医師「ああ…典型的だ、ほら、これが血種、三日月状になっているでしょ、慢性硬膜下血腫…、良い判断でしたね、判断のとおりでした」
隊長「ありがとうございます、で、どうですか?患者さんの状況は?」
医師「大丈夫ですよ、血種を除去すれば、多分1週間程度で退院できると思います、お疲れ様でした」
隊長「そうですか、それは良かった、ありがとうございました」
帰署途上
機関員「当たりですか?」
隊長「ああ、思ったとおり慢性硬膜下血腫だった、CTの画像は典型的な三日月型だってさ」
隊員「三日月型のCT画像、研修で教わりました、頭部打撲からずいぶん経ってからの意識障害、歩行障害ってまさにテキストとおりですね」
隊長「本当、しっかりとした聴取って大切だよな、認知症になったんじゃないか、そんな判断で治療のタイミングを失っている人もたくさんいるだろうなぁ…」
みなさんの考察はいかがだったでしょうか。Sさんの疾患名は慢性硬膜下血腫、頭部打撲からじわりじわりと徐々に出血し硬膜の下に溜まった血液が脳を圧迫し、意識障害や歩行障害などを引き起こします。高齢の男性に多く、救急隊も時々出会う事例です。
迅速な判断、早期の搬送、もちろん大切ですが、しっかりとした背景、訴えの聴取が非常に大切だと改めて考えさせられる事案です。